八角/ハッカク
カサゴ目トクビレ科
Sailfin poacher学名:Podothecus sachi
和名:特鰭/トクビレ
特鰭(トクビレ)はカサゴ目トクビレ科に属する魚で、名前を初めて聞く人も少なくないだろう。最大の特徴はオスの姿にあり、背ビレとしりビレが体に対して非常に大きく発達している。この大きなヒレが、和名「特鰭」の由来となっている。一方、市場や飲食店では「八角(ハッカク)」と呼ばれることが一般的で、こちらの名はオスの体が角張っており、断面が八角形に見えることにちなむ。メスは角がそれほどはっきりせず丸みを帯びた形だ。また、ヒレの大きさはオスとメスで大きく異なり、オスのヒレはうちわのように大きく広がり、その姿はまるで蝶の羽のようである。
八角は主に北海道で水揚げされるが、八角をターゲットにした漁はほとんどなく、カレイやホッケなどの漁に混じって獲られるため、漁獲量は多くない。以前は産地の北海道で安く食べられる地魚だったが、味の良さに加え物流の発達によって、現在では首都圏や関西の市場でも高級魚として扱われ、驚くほど高値で取引きされることもある。
漁期は海域によって異なるものの、ほぼ通年で水揚げがある。旬は12〜3月。特にオスは体色が黒いものほど鮮度が良く、エラが鮮やかな紅色のものが選びどころとされる。
生息域は北海道の太平洋沿岸およびオホーツク海沿岸で、水深20〜300mほどの砂泥底を好む。甲殻類やゴカイなどの底生動物を食べ、10〜11月にかけて交尾後に産卵する。体表にはウロコはなく、代わりに硬い骨質板が並び、左右に各4列の角張ったトゲが続く姿は、まるで鎧をまとったようである。オスのほうが大きく成長し、体長は50cmほど。体は細長く、頭から口先にかけてワニのように尖っているが、突き出ているのは鼻であり、口はそのやや下側に位置する。鼻先と下アゴの腹側には房状のヒゲが伸びている。
栄養面では、血流を促すとされるビタミンEをはじめ、目や皮膚の健康に良いとされるビタミンA、細胞や粘膜の働きを支えるビタミンB2、体内の水分保持に役立つカリウムなどが豊富に含まれている。
味わいは淡白な白身ながら上品な脂がしっかりのっており、刺身ではコリコリとした歯ごたえが楽しめる。塩焼きも人気で、札幌・ススキノの炉端焼き店では炭火で炙った極上の味に出会える。また、背開きにして味噌を塗って焼く「軍艦焼き」は地元ならではの料理だ。から揚げも美味しい。正油、酒などに漬けた身を片栗粉を付けて揚げるだけ。また、皮を薄く切って揚げた「皮せんべい」はパリパリとした食感が魅力で、酒のつまみにぴったり。冬には野菜をたっぷり加えた鍋もオススメで、皮をむき骨付きの身をぶつ切りにして煮込むと、骨からのダシと八角の旨みが鍋全体に広がる。そのほか、みそ汁や煮付けなどでも親しまれている。なお、八角にはアニサキスが付くことが確認されており、とくに夏場は注意が必要だ。刺身で食べる場合は目視でしっかり確認し、加熱や冷凍処理をする、内臓を早めに取り除くなどの対策が有効である。
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