北海シマエビ
十脚目タラバエビ科
Hokkai shrimp
学名/Pandalus latirostris Rathbun
鮮やかな朱色に輝く容姿が海のルビーと呼ばれる「北海シマエビ」。北海道では道東エリアの一部の地域でしか水揚げされないため希少価値が高く、幻のエビともいわれる。
北海シマエビの旬は初夏。6月中旬から7月中旬までの1ヵ月間。野付湾尾岱沼で、舟の帆を風に膨らませながら漁獲する「打たせ網漁」は明治時代から続く伝統の漁法で、夏の風物詩となっており、北海道遺産にも選ばれている。もう1つの旬が秋となり、漁期は年2回ある。そのほかの期間は資源保護のため漁は禁止されている。
体長は8〜13cmほど。全身が黄緑色と緑褐色の縦じま模様で、茹でると朱色に白が混ざった鮮やかな色味になり、北海シマエビの名もこの体色に由来する。額角は長いが上方にはあまり反り返らず、前方にまっすぐ伸びる。額角の上縁には13〜18本の可動棘があり、下縁には10〜15本の不動棘がある。体は紡錘形で、甘エビと呼ばれるホッコクアカエビよりも太い体型をしている。甲はわりと硬い。
北海シマエビの生態において注目すべき点は、成長途中にオスからメスへ性転換するところ。個体すべてがオスとして生まれ、2歳になっておおよそ10cm以上に成長するとメスに性転換する。北海道では8月下旬から9月の秋ごろが産卵期で、直径2mm前後の球形の卵を1度に200〜300個ほど産卵する。メスは受精卵を腹肢に付着させて、孵化するまで約9ヵ月間、抱卵する。食用とされているものは、ほとんどすべて性転換後のメス。寿命は3〜4年ほどと考えられているが、高齢のメスのほとんどが漁獲されるため、実際の寿命は不明である。
北海道では主にオホーツク海に面した東部エリアの海域、サロマ湖や能取湖、野付湾で水揚げされる。アマモの茂るような浅い海に生息。雑食性で小さな甲殻類や貝類を捕食する一方で、植物も摂食する。市場で取り扱われるタラバエビの仲間はその多くが深海に生息するものがほとんどで、浅い海に生息するものは珍しい。漁獲量が年々減っていることが懸念され、キロあたりの単価は3,000円前後で取引されることが多く、10,000円を超すこともしばしば。
2023年7月には「尾岱沼えびまつり」が4年ぶりに開催され名物の北海シマエビの塩茹での即売会などが行われた。尾岱沼産の北海シマエビはブランド価値が高いことで有名。
北海シマエビはタンパク質やビタミン、ミネラルが豊富。また、エビの中でもビタミンEが多いのが特徴で、女性ホルモン、男性ホルモンの生成を促し、繁殖機能を維持する働きや、生活習慣病の予防・改善の効果も期待できる。さらにDHA・EPAといった不飽和脂肪酸も含まれているため、血液サラサラ効果や脳の健康維持に役立つとされている。ほかにもビタミンB2、カルシウム、カリウム、ナイアシンなどを含み、非常に栄養価の高い食材といえる。
旬の北海シマエビは、肉質が引き締まり、特有の濃厚な甘みを持っている。この甘みは、冷たい北海道の海域でゆっくりと成長することで育まれるもので、他のエビにはない独特の味わい。食感がプリプリとしていて、口の中で弾けるような感覚を楽しむことができる。生食は甘エビなどに比べ甘みが少なく、茹でて食べるのが一般的。また、ミソも絶品で頭の部分は炙ったり唐揚げにすると最高の酒のアテになり、味噌汁やスープにしても風味豊かなダシが出て美味だ。
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