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春毛ガニ
クリガニ科

Horsehair crab
学名:Erimacrus isenbeckii
 

 2024年3月16日、枝幸・オホーツク海沿岸に春の訪れを告げる毛ガニかご漁が始まった。国内トップクラスの漁獲量で知られる宗谷管内枝幸町で初水揚げが行われたこの日、枝幸漁協の枝幸、山臼、音標の3港で計19トンが水揚げされ、キロ当たりの浜値は6,120〜6,629円と昨年より高値がついた。幸先のよい結果に今年の見通しは明るい。

例年、オホーツク海から流氷が去る “海明け”を待ちわびて、操業が開始される毛ガニ漁。早春の3月中旬から4月にかけて、オホーツク沿岸の港町ではこの「海明けの毛ガニ」の水揚げに沸く。漁は初夏まで続くが、海明けから4月下旬までが特に美味しい時期だ。流氷によってもたらされる良質な資源・豊かな餌で育った毛ガニは、堂々たる体躯を誇り、トロ箱から勢いよく飛び出してくるほど元気いっぱいだ。引き締まった身と濃厚な味噌がぎっしりと詰まり、市場では高値での取引となる。

毛ガニは、クリガニ科に分類されるカニの一種。北西太平洋の沿岸域に広く分布する大型のカニで、最大で甲長120mmに達し、オスのほうが大型になる。全体的にずんぐりした印象で、体は全身が淡赤褐色、体を覆う殻はあまり硬くなく、短い剛毛が密生し、和名はこれに由来する。季節移動するカニで、寒い時季には浅瀬に、夏になると深海に移動する。交尾期は7月から翌年の3月。オスはメスを抱え、脱皮を促し、精子を注入後、生殖孔に栓をする。抱卵期間が長いメスの脱皮は隔年で行われ、オスは毎年脱皮する。脱皮するたびに成長するのでオスがより大きくなる。脱皮の前後は身の付きが悪い。また旬の時期に獲れた毛ガニを生け簀に入れてもとても神経質なため、エサを一切食べず身入りや味が落ちてしまう。

水深150mあたりの水温が低い砂地に生息。宗谷、胆振、日高、釧路など道内各地で水揚げされ、資源保護のため各エリアで漁期が異なる。春はオホーツク海、夏は噴火湾、秋は釧路および根室沿岸、冬は日高沖と十勝沿岸など、各所で1年中獲られており、1年中美味しく食べることができる。ブランド化にも拍車がかかり、厚岸の「極」、えりもの「風極」、礼文島「寒毛がに」なども有名だ。

カニの主成分はたんぱく質で、脂質が少なく、ビタミン類はほとんど含まれていない。特に栄養的に優れているというわけでなく嗜好品という傾向が強い。カニ特有の旨みはペタインやホーマリンなどのエキス分によるものだ。これらは時間が経つと酸化し、食中毒成分となるので新鮮なうちに味わうのがよい。

「カニを食ってもガニ食うな」といわれる。ガニとはエラ(呼吸器官)のことで、キチン質の膜2枚の周囲を張りあわせたような薄いエラが重なりあっている。食べても毒ということはないが口の中でごそごそするだけ。寄生虫がついている場合もあるので一般的に食べることはない。

繊細な身とカニみその美味しさは北海道のカニならではのもの。ずっしりとした大振りの甲羅に、ぎっしりと詰まった身が特長だ。獲れたてをすぐにゆでる「浜ゆで」は絶品で、特にカニみそは、きめ細かな舌ざわりをもち、このうえなく奥が深い味わい。フォアグラのように脂肪分とグリコーゲンをたっぷり含み、これぞ珍味。ススキノでも取扱いのある飲食店が多い。

獲れたての新鮮な活毛ガニの脚は、生のまま殻を外し、氷水で冷やすと透き通った身がパッと開き、刺身で味わえる。また、焼きガニも絶品で甲羅から十分な旨みがでるので甲羅ごと炙れば、芳醇な香りが一層豊かに広がる。カニみそと絡めていただきたい。さらに酒呑みの楽しみのひとつは甲羅酒。身とみそをきれいに平らげた甲羅に燗酒を注いでじっくりと嗜みたい。
 

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