すすきの通信のロゴ
すすきの飲食店クーポン情報サイト
お気に入りのロゴ
お気に入り

タイトル

アンコウ/鮟鱇
アンコウ目アンコウ科

Monkfish/Anglerfish
学名:Lophius litulon
 

「霜月あんこう 絵に描いても舐めろ」という詠(うた)がある。霜月、つまり霜が降りてくる寒い季節のアンコウは描いてる絵を舐めてもいいほど価値がある。海水温が低くなることで身が締まり、春先の産卵に向けて冬場に栄養を蓄えながら肝がどんどん大きくなり、味のよさも増してくる。

つぶれたような平たい魚体、大きな頭、巨大な口には鋭い歯が並ぶちょっとグロテスクな風貌。体表にはウロコがなく、胴部や尾部は細くて短い、身肉には約80%も水分がある。しかしながら、その姿に似合わず、味は淡泊でしかも捨てるところがない。

外見がとにかく奇妙で、大きく裂けた口と前に突き出た顎。この「顎」が訛ってアンコウの語源になったらしい。体は柔軟で高速移動ができないが、待ち伏せしてエサを獲るため海底を這うように移動し、イカ、エビなど底層にすむ生物を貪食する肉食魚である。「アンコウの餌待ち」は口を開けてぼんやりしていることの例えに使われるが、実際には捕食動作は敏しょうで、吻部(フンブ/口あるいはその周辺が前方へ突出している部分)にある突起の先端の疑似皮弁を震わせ、近寄ってくる獲物をすばやく食べる。アンコウの英名には複数の呼び名があり、そのひとつ「Anglerfish」は釣りをする魚の意味である。

古くから美食家たちを唸らせてきた高級魚。江戸時代には水戸藩から将軍家へ献上された記録もあり、「三鳥二魚」と呼ばれる5大珍味の1つであった。ちなみに三鳥二魚とは、鶴、雲雀(ヒバリ)、鷭(バン)、鯛、アンコウのこと。

アンコウ類は世界に17科約270種類ほどが知られ、そのうち日本近海には約60種が生息する。そのうち食用とされるのはアンコウ科とフサアンコウ科に属する数種程度で、そのなかでもアンコウとして流通されるのは「アンコウ」と「キアンコウ」という標準和名の2種類。市場では、アンコウを「クツアンコウ」、キアンコウを「本アンコウ」と呼んで区別しており、単に「アンコウ」というときは、より流通量の多い「キアンコウ」を指すのが一般的だ。頭の上についた突起が発光する「チョウチンアンコウ」は、基本的に食べられない。

メスは体長1〜2メートルにまで成長するのに対し、オスの体長は大きくても10〜20センチメートルほどといわれおり、食用にされるのは基本的にメスのみ。また、アンコウは珍しい産卵方法をとることでも有名。小さなオスは、巨大なメスの体に融合して、そのまま目や内臓など大部分の組織を失ってしまう。オスはメスから栄養を受け取る代わりに、産卵のタイミングにあわせて精子を供給するという独特の繁殖方法を行う。

2023年の取り扱い量は全国で約449トン。出荷量が最も多いのは北海道で約227トンと全体の約51%を占めている。日本近海の水深100〜300メートルの砂底に生息。北海道では留萌、石狩、江差沖で獲られ、市場では高値で取引される。

「西のフグ、東のアンコウ」と称されるほど、その美味しさはお墨付き。「食べられないところがない」といわれるように骨以外のほとんどが食用。身、肝、ひれ、えら、皮、ぬの(卵巣)、水袋(胃)を俗にいう「7つ道具」と呼ぶ。

淡白な白身、皮はコラーゲンたっぷり、水袋は歯ごたえがあり、ぬのもエラも独特の食感。極めつけはやはりアンキモで海のフォアグラと称される。身はビタミンB2が豊富で健康維持に優れていて、アンキモにはビタミンAやビタミンDが多く老化防止に効果的。活性酸素を抑えるビタミンEも含有し、とにかく栄養価が高い。

料理は、鍋の王様と評される「あんこう鍋」が代表格だ。味付けは味噌また醤油仕立てが一般的であっさり風味。「7つ道具」それぞれの味わいと食感を楽しめる。「どぶ汁」は生肝を煎ってから、身と野菜だけの水分でつくる鍋。濃厚でクセも強い。

アンキモは、口の中でトロリととろけるような食感は至極の逸品。唐揚げは皮や身を唐揚げにして、レモンを振りかけて食べるのが通。フグに似た食感で美味。茹でたアンコウの身を酢味噌でのばしアンキモと和えた「共酢」は酒の肴として親しまれている。「煮凝り」はアンコウの旨みととコラーゲンがたっぷりな逸品。調理法は「吊るし切り」いう独特の捌き方がある。
 

PAGE TOP