花咲ガニ
十脚目ヤドカリ下目タラバガニ科
Hanasaki-crab
学名:Paralithodes brevipes
北海道の主に根室半島付近で獲れる花咲ガニの旬は、カニには珍しく夏から秋にかけて。個体数の減少により漁獲期間などが制限されており、漁獲量の大半を誇る根室市では毎年、7月に漁が解禁される。
花咲ガニは十脚目、ヤドカリ下目、タラバガニ科に分類される甲殻類の一種。十脚目とはエビ・カニ・ヤドカリを含み、世間で甲殻類として認識されるものは、ほとんどこれに含まれる。和名は根室半島の旧名である花咲半島にちなんだもの。また、熱を加えると花が咲いたように鮮やかな朱色に変わることからその名前がついたともいわれている。タラバガニ、ズワイガニ、毛ガニと並び、日本四大カニといわれる。どれも高級なカニとして知られ、花咲ガニも高額な部類のカニになる。海外産は1kg5,000円くらいで、国産になると1kg10,000円を超えることもある。
花咲ガニの生態は、4月下旬から産卵を行い、1年間の抱卵の後に放出される。7月を過ぎたころに2mm程の稚ガニとなって着底し、1年後に10mm程度、2年後に20mm程度に成長する。孵化から3年程度は、潮位変化によって露出する潮間帯域に生息し、潮だまりなどでみかけられることがある。その後は、水深50mから200m程度の海域に移動すると考えられ、孵化後6年で成熟。漁獲サイズの甲長9cm台になるのに8年はかかると推定される。最大は甲幅・甲長ともに15cm程になり、甲殻類としては大型だがタラバガニ程ではない。甲は後部中央が少しへこんだハート型をしている。甲、はさみ、脚に多数の棘があり、タラバガニよりも体の棘が長い。脚は太く短い。
分布範囲はベーリング海からオホーツク海沿岸、サハリン、千島列島で、北海道周辺では納沙布岬からえりも岬付近の太平洋側と、根室半島のオホーツク海側に生息する。漁獲の中心は納沙布岬周辺海域。近縁のタラバガニに比べると範囲が狭く、分布する水深も浅い。かつては漁期漁法に制限はなく捕獲されていた。1970年代の200海里制度導入以前には年間1,000トン程度の漁獲高があったが、乱獲による資源減少のため2000年以降は100トン未満となり、その後数年間の禁漁措置が行われると同時に人工育成種苗(放流用)の開発が現在も続けられている。
花咲ガニの最大漁獲量を誇る根室では毎年8月末に「根室かに祭り」が開催される。花咲ガニの茹であげ実演・販売をはじめ、カニの早食い競争などのイベントが行われる。花咲ガニの旬の時期に、茹でたてを食べることができる絶好の機会として多くの来訪者で賑わう。
花咲ガニは低カロリーなだけでなく、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす効果があるといわれるタウリンをはじめ、ナイアシン、カルシウム、抗酸化力の強さから美容サプリメントなどにも用いられているアスタキサンチンなどが豊富に含まれる。
一般的な食べ方は「茹で」。身は、ほかのカニに比べると弾力があり、食感がプリッとしており、味が濃厚。寿司ネタとしても好まれている。殻のまま脚をぶつ切りにして、みそ味仕立てにした「鉄砲汁」は根室の郷土料理。とてもよいダシが出るので鍋料理に向いている。身をたっぷり入れた炊き込みごはんやグラタンなども美味。カニみそや内子、外子は珍味として人気がある。ちなみに鉄砲汁という名は、花咲ガニを食べる時に箸でカニの脚をつついている様子が、鉄砲に玉を詰めている様子に似ていることに由来する。
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