甘エビ/ホッコクアカエビ
ホンエビ上目タラバエビ科
Alaskan pink shrimp学名:Pandalus eous Makarov
「甘エビ」と呼ばれ、北海道ではおなじみ。正式な名称は「ホッコクアカエビ」という。「ボタンエビ」と同じタラバエビ科タラバエビ属の一種で、北海道の日本海沿岸から北陸にかけて多く獲れる。主に刺身として人気が高く、生で食べるととろけるような甘みがあり、このことから広く一般的に「甘エビ」と呼ばれる所以になっている。国内の主産地では「南蛮エビ」とも呼ばれるが、「南蛮」とは唐辛子を意味し、その色や形が唐辛子に似ていることにちなんでいる。
ほぼ通年漁獲があり市場に出荷されている。美味しい旬の時期については諸説あり、晩秋から冬にかけての海水温が下がる時期のほか、富山や新潟、石川などの北陸地方では休漁明けの9月からとされている。北海道では、流氷が離れる3月に一斉に漁が解禁となり、水揚げがピークとなる4〜5月は最も実入りがよく美味となる。春先に産卵に向けて栄養を蓄えているためだ。
ホッコクアカエビはタラバエビ科のエビと同様、成長の過程で性転換をする雄性先熟で、産まれて3年程はオス、メスの区別なく、4年目から5年目にかけてすべてオスとなり交尾に参加する。その後5〜6年でメスに性転換し、7年目で孵化直前の抱卵状態となる。寿命は11年ほどとみられ、その間に3回以上産卵すると考えられている。
春から夏にかけて南の方から産卵期に入り、日本海のものは1年おきにしか産卵しないことがわかっている。卵は直径1mm前後の青みを帯びた球形で、1度の産卵で2000〜3000個を産み、産んだ後約10ヵ月もの間メスは受精卵を抱えて孵化するまで保有し、翌年の冬に放出する。5年目くらいの性転換をする時のオスが最も美味しい時期だといわれ、大きいものはすべてメスということなり、同じ時期に獲っても抱卵しているものとしていないものがある。これは先に述べたように、1年おきの産卵であるためだ。体長10〜13cmで上から見ると頭胸甲から腹節まで一様にスリムなエビで、体色は透明感のある鮮やかな赤色。額角は頭胸甲長の1.5倍と長く、上縁に12〜16歯、下縁に6〜9歯があり、上向きに反っている。第3腹節は背面の一部が側へんし、かつ隆起し小突起している。第2腹節の側面は他の節よりも幅が広く、両隣の腹節にかぶさる形になっている。
ホッコクアカエビは水深150〜500mの深い海底の泥底に多く生息し底生の小動物、死骸などの有機物を食べているが、はっきりとした生態はまだ解明されていない。日本近海での分布は北海道沿岸から富山湾、朝鮮半島東岸に広く生息する。近年、北大西洋のものは分類上「ホンホッコクアカエビ」という別種として扱われている。
ホッコクアカエビの主な産地は北海道で全国の7割以上を占める。主に日本海沿岸で漁獲され、1982年の4155トンをピークに減少。1991年に最低(1400トン)となった後、増減を伴いながら緩やかに回復し、2016年の漁獲量は2693トンであった。
※2017年度水産庁調べ
留萌管内の増毛、留萌、小平、羽幌が名産地と知られ、留萌沖約100Kmに位置している武蔵堆(むさしたい)は国内で屈指のエビ漁場。春にはイベントも行われているが、2021年「増毛春のえびまつり」はすでに開催中止が決まっている。
主な漁獲方法にはエビカゴと底引き網があるが、エビカゴで獲られたものの多くは獲ってから港まで船の生け簀に入れられ、鮮度もよく値段が高い。一方、底引き網で獲れたものは、他の魚なども一緒に混じって獲れることもあり、鮮度や品質が落ちるため、エビカゴに比べると格段に安くなる。
高タンパクで低脂肪、糖質はゼロ。また、血中のコレステロールを下げ、動脈硬化などの生活習慣病の予防にも効果のあるタウリンが豊富に含まれている。さらにDHAやEPAも多く、高たんぱく低脂肪で身体に優しい食材だ。ちなみに甘エビの強烈な甘みは脂肪によるものではなく、たんぱく質に含まれるグリシンやアラニンなどアミノ酸の働きによるもの。甘さの成分であるアミノ酸は死後1日以上たたないと出ず、採れたての新鮮なエビにはあまり甘みはない。
いろいろな食べ方を楽しむことができ、甘エビの味そのものを楽しむのであれば、やはり刺身。独特の甘みがあり、プリっとした食感で、濃厚な旨みが口の中に長く残るのが特長。さらに刺身を使った定番といえば握り寿司。北海道では寿司ネタのエビといえば生の甘エビがあげられる。刺身で使って残った頭や殻は、味噌汁などにしてもよく、ラーメン、パスタ、魚料理のダシや風味づけにも活かされている。
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