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マツブ/真ツブ
エゾバイ科エゾボラ属

Japanese neptune
学名:Neptunea polycostata
 

真ツブの正式名はエゾボラといい、大きいものは体長が20cmを超え1kg近くまで成長する。殻は頑状で、赤褐色を帯び、螺層の肩の部分にはコブが並ぶ。殻の内面は白色、黄色、橙色、褐色で厚い革質の蓋をもつ。水深10mから200m位までの砂泥底にすみ、肉食性で、他の貝類やゴカイ、死んだ魚などを餌としている。雌雄異体で、交尾を行って体内で受精し、海底の岩や貝殻に、弾力があって丈夫な殻に包まれた卵塊を産み付ける。孵化には約1年掛かるが、卵から出た時にはすでに親と同じ姿になっている。

東北以北、特に北海道の道東方面に多く生息し、産卵期は11月中旬から4月、旬は4月から7月となる。漁獲量が多いのも道東の日高地方で、1本の幹縄に餌の入った台形状で円柱形のかごを約10メートル間隔で100個程付け海底に沈め、真ツブがかごに入るのを待つ「つぶかご漁業」を行なっている。北海道では流通量が多く、生食用の巻き貝としては一般的だ。全国的に人気があるため値段はツブの中ではもっとも高く、品薄でキロ単価が15,000円以上になったこともある。様似町では、200g以上を小、300g以上を中、400g以上を大と個体の重さによって等級を定め、200g未満は放流する。真ツブは、200gに成長するのに8年を要するため無計画に捕獲すれば枯渇してしまう恐れがあるからだ。

真ツブはコリコリした食感と、噛めば噛むほどに広がる濃厚な旨みが特徴で、刺身、煮貝、つぼ焼き、串焼き、天ぷら、中華炒め、バター焼き、アヒージョなど和洋中いろいろな料理で楽しめる。北海道では寿司屋や居酒屋でも定番のメニューになっており、酒のお供にもピッタリの貝だ。ただし、調理の時に気をつけなければならないのがツブ貝の持つ「テトラミン」という成分。唾液腺(通称:アブラ)にはこの成分が含まれており、食べると食中毒症状を引き起こす。微量であれば症状は軽くわからない程度で死亡例もないが、ツブ数個分の唾液腺を食べてしまうと吐き気や頭痛、めまいを引き起こしたり、酔っ払ったような感覚になる。「テトラミン」は熱に強い性質を持つため、加熱しても分解されないので調理前に取り除くことが必要だ。

北海道では、主にエゾバイ科に属する食用の巻き貝を総称して「ツブ」と呼ぶ。真ツブと呼ばれるエゾボラのほか、トウダイツブと呼ばれるオオカラフトバイ・シライトマキバイ、毛ツブと呼ばれるアヤボラ・バイツブ、磯ツブと呼ばれるエゾバイなど、様々な種類が生息する。ツブ貝100gあたりのエネルギーは約86kcal、タンパク質が多く、炭水化物と脂質は低い。また、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンB12、ビタミンEを含む。貝類は他の食材と比べて低カロリー、高タンパク質なので、ボディーメイク中の食事にもピッタリだ。また、これらの成分により疲労回復、便秘・食欲不振の改善や予防、神経・血管・血液・細胞膜の健康を守る効能も期待される。

真ツブの刺身の作り方
アイスピックなどで口の横の膨らみのある部分に穴を開ける。そのまま殻の中心に巻き付いた部分を上下左右に動かし殻と身を外す。口の部分から身を突き刺して引き出し、ワタ部分とアブラ(有毒部位)を取り除く。塩で身を揉み、すぐに流水で洗って縦に二分割する。好みの厚さにカットして盛り付ける。ワタ部分は醤油、酒、みりん、砂糖、生姜などで甘辛く煮込んだり、ガーリックバターで炒めると美味。
 

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